「え、第二夜だけ地味すぎない?」
百年愛のロマンチックな第一夜から一転、
今度は“悟れなきゃ首も取れない”修行悪夢。
正直、これ読んで「何が面白いの?」って思ったやつ、安心していい。
救いも感動もゼロ。
出てくるのは、プライドこじらせた侍と、煽ってくる和尚だけ。
だけど「意味不明で終わる夢」こそ、
漱石が描きたかった人間のどうしようもなさなのかもしれない。
今回はわからなさも丸ごと味わう団子的レビュー。
さあ、地味夜の理不尽に突っ込むぞ。
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悟れなければ首も取れない――これが夢十夜・第二夜
和尚にバカにされた侍、無を悟ろうと修行に明け暮れる。
悟れたら和尚の首を斬る、悟れなきゃ自分が切腹。
誰にも頼まれてないのに、プライドと意地だけで背水の陣。
座蒲団の下には短刀。
「悟りとは何か」「無とは何だ」
と頭でグルグル回してるうちに、
行燈も絵も有って無いような、無くって有るような――
もはやプチ幻覚。
結局、「無」も悟れず、時計の音に急かされながら詰み確定。
そんな理不尽な夢。
禅の「無」とは何だ?現代人にとっての悟りのヤバさ
「無になれ」って禅的には究極の悟り、何もない心に到達することらしい。
でも現代人からしたら、「無」って何だよ?頭カラッポにして人生変わんの?
…ぶっちゃけ意味不明。
ミニマリストも自己啓発も「執着を捨てれば最強」って言うけど、
悟りのゴールが「和尚の首を斬る権利」ってのもイミフだし
団子的には「悟ったら好きなもん食わせろ」くらいのご褒美が妥当じゃね?と突っ込みたくなる。
そもそも“無”って、感情も欲も希望も「なにもない」ってこと。
「そこまで空っぽになったら、人間の面白さも消えそう」
「禅の“無”は人生攻略に必須なのか?」
という疑問しか浮かばない。
しかも、この第二夜では「無を悟ったら和尚の首が取れる」という奇天烈なシステム付き。
これ、現代で言えば、
「断食チャレンジ成功したら上司を殴ってOK」
みたいな無理ゲーだろ。
だけど、日本人は昔から
「執着しない美学」「静けさ」「余白」に価値を置いてきた。
ミニマリストが流行ったり、SNS断捨離がトレンドになったり
「何も持たない=豊か」みたいな思想が、どこかに染み付いてるのも事実。
それでもやっぱり、
「無を悟ったら首斬りOK」ってルールは意味不明だし、
現代人がこの修行をマジで実践したら、全員病むと思う。
なぜ漱石は“無”にこだわった?――時代背景とトラウマ考察
漱石が生きた明治時代は、自己喪失と自我の葛藤が知識人たちのトラウマだった時代。
西洋の合理主義が一気に流れ込んで、
「個人の幸せとは?」「伝統はどこまで守るべきか?」
って全員が迷子になってた。
漱石自身も神経衰弱・胃弱と闘い続け、
人生のどこかで
「全部投げ出して“無”になりたい」
と思った瞬間が何度もあった。
「自分は何者なのか」「社会の中でどう生きるのか」という
今でいうアイデンティティクライシスのど真ん中にいた人間だ。
だからこそ、夢の中で“無”にこだわる侍が出てくる。
「プライドをバカにされて全力で悟りを追う」「達成できなければ全部終わり」
この追い詰められ方は、
漱石の生きづらさや完璧主義の苦しさそのもの。
しかも「無を悟る」=「すべてから解放されること」だけど
実際は
「何もかも投げ出す勇気もない」「結局、何も変わらない」
この虚しさ・報われなさも、漱石の人生そのものを重ねて見てしまう。
現代でも
「全力で努力したのに認められない」
「頑張ったのに何も得られなかった」
そんな経験、誰しもある。
漱石はそれを、夢の中で“無”として象徴させたのかもしれない。
【第一夜とのギャップ――ロマンチックの直後にコレ!?】
前夜は百年愛を描くロマン派・純文学の極みだったのに、
第二夜でいきなり「悟りバトル」「自爆型サムライ」「救いゼロの無」
……この落差、団子的にどう受け止めろと!?
第一夜で「人間って美しい」と思わせておいて、
翌日には
「人間ってめんどくせえ」
「報われない・どうしようもない」
現実を突きつけてくる。
漱石は人生の陰と陽を一夜ごとに見せてくる、最高の演出家なのかもしれない。
逆に言えば
「どんなに感動しても、次の夜には全部ひっくり返るのが人間の心」
そんな皮肉も込められてる気がして、団子的には妙に納得した。
【ぶっちゃけ感想・団子的まとめ】
第二夜――短いし救いもない。
悟れたら斬れる、無理なら死ぬ、ってプライドの地雷で全部台無しにする侍の話。
和尚も主人公も、今でいえば「Twitterでマウント合戦→勝手に炎上して終わり」みたいなもの。
「悟り」なんて、追い詰めすぎるとただの無理ゲーになるだけ。
漱石も、夢の中でくらい理不尽にぶっ壊れたかったのかもね。
今夜も悟れぬまま寝よう。
団子的には「悟りより団子」。
そう思ったら、ちょっと救われる気がした。
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