『夢十夜』第三夜が地味に怖すぎる件――血も叫び声もない、上品すぎる怪談

夏になるとホラーが増える。でも血が出たり叫び声が飛び交うやつはもうお腹いっぱい。
そんな団子にちょうどいいのが、夏目漱石『夢十夜』の第三夜。
古典のくせに、これが意外と怖いんだな。
派手な演出ゼロ、音も光もない。なのに、ぞわっとくる。


夢十夜・草枕 (集英社文庫)/夏目 漱石 (著)

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「何があるのかざっくり見たい」という方は、先にこっちから眺めてもOK。

目次

あらすじ|恐怖の一夜

「こんな夢を見た」で始まるこの第三夜。

語り手は六歳の盲目の子供を背負って、暗い田舎道を歩いている。声は子供、でも口調は妙に大人びている。

「お父さん、重いかい?」

「今に重くなるよ」

背中の子は、まるで語り手の過去・現在・未来を全部知っているかのように喋る。そして突然、こう言い出す。

御前がおれを殺したのは、今から百年前だね

――ぞわっ。

背負ってるのは自分がかつて殺した盲目の子供。
自分が“人間だった頃”の罪が、夢の中でよみがえってくる。

その瞬間、背中の子供が石地蔵のようにずっしり重くなる。

なぜ人は“怖い夢”を見るのか?

団子はよく「追いかけられる夢」を見る。相手は見えない、理由もわからない。でも全力で逃げてる。
――で、目が覚めたらドッと疲れてる。…あれって一体なんなんだ?

実は、「怖い夢=意味がある」という説は意外と多い。
脳科学や心理学では、こんなふうに解釈されてる。

夢は「感情の処理装置」説

夢は、起きてる間に感じた強い感情――とくに恐怖・不安・罪悪感を脳が整理するプロセスだと言われてる。
つまり、現実で感じきれなかった感情を、夢の中で再体験して処理しようとしている


■「脳のシミュレーション機能」説

もうひとつの説は、夢は危機的状況の練習
「逃げる」「追われる」などのシーンを脳内で繰り返しておくことで、もし現実で似た場面が起きたときにすぐ反応できるよう、本能的な訓練をしているという話も。


■「PTSDの夢」に似てるケースも

強いトラウマを持つ人が、似た状況を何度も夢で見てしまうことがある。
これは単なる記憶じゃなく、脳が“未解決の感情”として処理し続けているから。
つまり、夢に出てくる怖さは、現実で消化しきれていない“何か”の影かもしれない。

漱石って怪談書くタイプだったの?

漱石=『坊っちゃん』のユーモアおじさん、ってイメージあるかもだけど、実はこういう不気味な話もかなり得意。
彼、学生時代から怪談や志怪小説に触れていて、仏教の輪廻思想や罪の意識なんかにも興味があった。

第三夜は、明治の近代人として合理主義を掲げつつ、その裏でこっそり「罪とか死とか、やっぱ怖いんだよな…」とつぶやくような、そんな作品。

地味に、夏目漱石の二面性が出てる。


夢十夜・草枕 (集英社文庫)/夏目 漱石 (著)

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