深夜のオフィス。
眠い頭でコピー機を叩いていた男は、プリントに真っ黒な丸い穴が印刷されていることに気づく。
ただの印刷ミス——そう思って触れた瞬間、その黒は“平面”ではなく、“どこかへ通じる穴”だった。
今回紹介するのは、たった数分で人間の欲と恐怖を描き切るSF短編映画『The Black Hole』。
紙に印刷された穴は、壁も金庫も貫く。
便利すぎる。明らかに怪しい。
そして、男は当然のように“悪い使い方”をする。
この穴は何なのか?
なぜ現れたのか?
そして、男が最後に見たものとは?
短編だからこそ読後の余韻が強い、小粒だけど刺さるタイプのディストピアショートだ。
The Black Holeネタバレあらすじ
深夜のオフィス。
コピー機の紙詰まりにイラつきながら作業していた男は、プリントアウトした紙に、謎の黒い穴が印刷されていることに気づく。
触ると……手が中に入る。物理法則ガン無視。
試しに自販機に紙を貼り付けてみると、手を中に入れてチョコレートバーを盗むことに成功した。
そして男は気づいてしまう。
「金庫の金、全部いけるんじゃね?」
金庫の扉に“黒い穴”を貼りつけ、腕を突っ込んで札束を盗み始める男。
ところが、欲に目がくらみ男が全身を金庫の中に入れたその瞬間、黒い穴が描かれた紙がぽとりと地面に落ちた。
気づいたときには遅い。
男の身体は金庫の中に閉じ込められ、オフィスには誰も来ない──。
焦げ団子ブラック版・通りぬけフープか?これ
※(ドラえもんの道具で、壁に貼るとその先をすり抜けられるやつ)
The Black Hole見所・考察



この章では短編映画『The Black Hole』の見どころを紹介していくぞ!
見どころ①|“穴”の変化が映し出す人間の欲望
この短編がやたら印象に残るのは、
ただの黒い穴を 「便利アイテム」から「欲望の罠」へと変貌させていく手際の良さにある。
最初はチョコをくすねるだけの、悪戯レベルの使い方。
でも一度成功すると、人間はすぐ調子に乗る。
自販機の内部に手を突っ込んでみたり、「金庫もいけるやん」と謎の自信が湧いてきたりと、だんだん 穴の使い方がエスカレートしていく。
この流れ、どこか ドラえもんの道具を悪用するのび太 を思い出す。
最初は「ちょっと遊ぶだけ」のつもりが、気づけば町内レベルの大災害に育ってる、あのパターン。
便利さだけを見ると、人間の判断力は簡単にショートする。
そして最後は案の定、穴が仕掛けた罠のように、自分自身が飲み込まれて終わる。



古今東西、調子に乗った人間はだいたい自滅する。
たった数分の作品なのに、その因果応報のラインが綺麗すぎて笑えてくる。
見どころ②|サイズが変わるのはミス?それとも罠?
この短編、ツッコミどころは多いけれど、いちばん気になるのは “穴のサイズが勝手に変わってる” という点。
最初は顔が入るか入らないか程度のちっちゃい穴なのに、金庫のシーンでは、ほぼ全身が通るほど巨大化している。
ここでまず2つの説が浮上する。
① 制作陣のミス説(いちばん妥当)
身も蓋もないけど、これが一番リアル。
短編って制作スケジュールもカツカツだし、「画として映えるかどうか」を優先してしまうことが多い。
・冒頭で穴が小さい → “日常の違和感”として分かりやすい
・金庫では大きい → 全身が入れたほうがサスペンスが出る
つまり、演出重視で整合性が吹き飛んだという可能性。
アニメで例えるなら、服の色が1コマ目と4コマ目が違うやつ。



漫画ではよくある「気にすんな、ノリだよノリ」案件。
② 穴が“意志を持つ存在”説
もう少し作品寄りに読むなら、この黒い穴はただの「謎エフェクト」じゃなくて、人間の欲望に反応して形を変える生き物だと見ることもできる。
最初に現れたとき、穴は「ちょっとしたイタズラ」ができるサイズしかない。
せいぜい自販機からチョコを抜き取ってニヤつく程度。
ここではまだ、男の欲も小さなズルレベルで済んでいる。
でも、男の頭の中が「これ、もっとデカいことに使えるんじゃね?」に切り替わった瞬間から、穴の役割も変わる。
金庫のシーンでは、穴は大きくなり全身が通れるサイズになっている。



ここが一番気持ち悪いところで、
穴そのものが「はい、じゃあそろそろ中までおいで」と
男を招き入れているように見えてくるんだよね。
寓話やホラーに出てくる悪魔のアイテムってだいたいこういう動きをする。
最初はささやかな願いを叶えてくれるけど、人間が慣れたタイミングで一段深いところまで引きずり込んでくる。
この作品の穴は 「重力」じゃなく「欲望」で人間を引き寄せるブラックホール になっている。
考察|主人公は助かるのか?ラストの意味とは
現実的に見ると、この男が即死する可能性はかなり低い。
作中の金庫は、銀行の大型金庫でも密閉専用の耐火金庫でもなく、会社に置いてある普通の金庫だ。
完全密閉ではないから、数時間で酸欠死……みたいなホラー展開には現実味がない。
それに舞台は深夜のオフィス。
すぐ近くには自販機があり、同じフロアに誰かが早朝に来てもおかしくない環境だ。
朝になって出勤してくる社員がいれば、内側からどんどん叩いて声を上げれば、普通に気づかれるはずだ。
よほど運が悪くない限り、肉体的には助かる可能性が高い。
ただし——社会的には確実に終わる。
金庫から救出された瞬間、「なんで中にいたんですか?」という地獄の第一声が飛んでくるし、盗んだ札束もほぼ100%バレる。命は助かっても、人生の方は詰み。
この生存はできるのに、社会的には死ぬという後味の悪さが、短編ホラーとして実はすごく効いている。
The Black Holeまとめ|短編だからこそ浮き彫りになる人間の欲
『The Black Hole』は、たった数分の短編なのに、人間が自滅する瞬間だけをピンポイントで切り取る構成が本当に上手い。
黒い穴そのものは、ただの便利アイテムにも、悪魔の罠にも読める。
でも最終的に主人公を追い込んだのは、穴じゃなくて欲望にブレーキをかけられなかった自分自身。
それが短編ホラーの気持ち悪さであり、面白さでもある。
金庫の中で生存はできるかもしれない。でも、社会的には詰み。



短編だからこそ、物語より人間が赤裸々に映る一本だった。
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