「天才会計士が殺し屋」という設定を聞いて、なんとなくB級アクションかと思ってスルーしてた。
でも観てみると意外にも、静かで、地味で、でもクセになる。
ヒーロー然としない主人公、進展しないヒロインとの関係、説明しすぎない伏線回収。
派手な爆破やコテコテのラブロマンスはない。だけど、妙に心に残る。
『ザ・コンサルタント』は、そんな静かな異色作だった。
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ザ・コンサルタント(The Accountant)ネタバレあらすじ
クリスチャン・ウルフ(ベン・アフレック)は、天才的な会計スキルを持つ男。
自閉症スペクトラムであり、極端な習慣や刺激への過敏さを持ちながらも、数字の扱いにおいては圧倒的な集中力を発揮する。
彼は表向きは小さな事務所で会計士をしているが、裏ではマフィアや武器商人といった危険なクライアントの帳簿を請け負っていた。
そんな彼のもとに、大手ロボティクス会社から「社内の不正調査」の仕事が舞い込む。
会社の経理担当ダナ(アンナ・ケンドリック)と協力しながら不正の痕跡を突き止めるが、同時に何者かに命を狙われ始める。
物語が進むにつれ、クリスの過去――父による軍事的な教育、愛する母の不在、弟との複雑な関係、そして彼がなぜ殺し屋のような訓練を受けたのかが明らかになっていく。
事件の黒幕とされるのは、なんとロボティクス会社の創業者自身。
会社の金を私的に流用していた彼は、口封じのために次々と関係者を殺していた。
クリスは黒幕の屋敷に単独で乗り込み、命を狙われていたダナを守りつつ事件を終わらせる。
その最中、襲ってきた殺し屋の正体が「実の弟」だったことも判明。
兄弟は再会を果たし、銃を交えたあとに静かな会話を交わす。
長年の誤解や怒りをぶつけ合った末、完全に和解とまではいかないが、それでも兄弟として再びつながる可能性を残して、別々の道へと戻っていく。
物語のラスト、クリスは姿を消し、ダナの元には1枚の絵が送られる。
それは彼が心を許した唯一のサインであり、2人の間には言葉にはならない“絆”が確かに残っていた。
ザ・コンサルタント(The Accountant)感想・見どころ4選
ここからは『ザ・コンサルタント(The Accountant)』の見どころについてご紹介していきます!
見どころ①:ヒロインとの関係が“あえて進まない”のがいい
普通なら、命の危機を一緒に乗り越えた男女って、最後にはなんやかんやでキスして終わりそうなもんだけど、この映画は違う。
クリスとダナの関係は、終始“距離感のある交流”のまま進展しない。
でもそれが逆にリアルで、好感すら持てた。
そもそも、主人公のクリスは人と深く関わるのが苦手で殺し屋家業という危険な仕事をしている。
彼女と一緒にはいられない。
そんな彼が「彼女を狙う敵を倒す」とか「絵を贈る」っていう、言葉で語らない愛情を示すこと自体が、この物語の中では大きな意味を持っている。
見どころ②:自閉症×殺し屋×会計士という異色すぎる設定
こんな肩書きが並ぶ主人公、ハリウッドでもなかなか見ない。
しかもそれぞれがただの記号じゃなくて、ちゃんと物語に活かされてる。
- 会計士のスキルで、複雑な資金の流れを瞬時に見抜く
- 殺し屋の訓練は、幼少期に父から受けた極端な教育の賜物
- 自閉症スペクトラム特有の習慣やこだわりが、彼の行動を支配している
この3つが絡み合って、ただの「強い男」じゃない、異質で孤独な存在を成立させてるのがすごい。
見どころ③:キャラの地味さがむしろ魅力
クリスもダナも、見た目のハリウッドっぽさは控えめ。
いかにもなイケメン(いやかっこいいけど)でもなければ、ドレスアップしたお姫様でもない。
服装もメイクもシンプルで、色合いすら地味。
でもそれが逆にリアリティを出してて、この物語の温度とすごく合ってる。
焦げ団子「目立つ人たちの派手な話」じゃなくて、
“目立たない人たちの内側”に焦点が当たってる作品。
見どころ④:兄弟の存在とラストの“答え合わせ”
序盤にさらっと出てくる「兄弟」の話が、実はすべての鍵を握っている。
でも映画は、それを中盤でほとんど忘れさせるように構成してる。
だからこそ、ラストで兄弟の正体が明かされる瞬間にガツンとくる。
「え、あの人が……」ってなるけど、見返すとちゃんと伏線が張ってあったことに気づく。
兄弟との再会シーンも、ドラマチックというよりは静かで、ちょっと不器用な和解なのがまた良い。
ザ・コンサルタント(The Accountant)ラストシーン考察|あの絵って、何だったの?
物語のラスト、ダナのもとに届いた一枚の絵。
あれ、彼女が作中で「これ好きかも」と言っていた、色が飛び散ったような抽象画に似てる。
ジャクソン・ポロック風の、あの混沌のアート。
もちろんはっきり描写されてはいないけど、たぶんあれ、クリスが贈ったもの。
こっそり、でも確実に「自分の存在」を残したかったんだと思う。
① 自分なりの好意の伝え方
クリスは会ったり電話したりができない。
でも、あのやり取りで彼女が特別な存在だったのはたしかで、言葉じゃなく、プレゼントというかたちで「覚えてるよ」って伝えた。
②「理解してくれた人」へのお礼
ダナは、彼の不器用さや特異な特性を、驚きつつも否定しなかった。
あの関係性って、たぶんクリスにとってかなり稀有だったと思う。
だから、ただの贈り物じゃなくて、「自分はあなたには心を開けた」っていう、無言の感謝だったんじゃないかなと。
③ ポロックの絵 =「自分そのもの」
ポロックの絵って、見る人によってはただの“ぐちゃぐちゃ”なんだけど、
クリスには、そこに秩序やパターンが見えてる。
つまり、「自分にとってはこれが世界の見え方だ」っていう自己紹介でもある。
「自分はこういう人間です」と伝える、名刺みたいなもの。
そしてそれを、理解してくれた相手にだけそっと渡す——そういうラストだったのかもしれない。



こんなふうに、ラストの感情を言葉で説明しすぎない終わり方は、むしろアジア映画的だなと思った。
アメリカ映画でここまで余韻に任せるって、けっこう珍しい。
ザ・コンサルタント(The Accountant)まとめ|静かなスリラーを味わいたい人に
一見すると、「天才会計士が殺し屋」っていう奇抜な設定に釣られそうな映画だけど、実際に観てみると静かな余韻が残る異色作だった。
アクション映画ではあるけど、言葉にならない距離感や、孤独な人同士のすれ違いが印象に残る。
特に、ヒロインとの何も起きない関係性が、逆にリアルで良かった。
あの絵に込めた想いも、クリスの思いも、ぜんぶ言葉にはされない。
でもそこにある感情だけは、ちゃんと伝わってくる。
派手な展開よりも、静かな余韻を味わいたい人におすすめの一本。
映画が終わったあと、ちょっとだけ自分の感覚も静かに整えられるような、そんな作品だった。
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