あなたにとって、“自由”ってなんですか?
お金?成功?評価?
――あるいは、草原を駆け抜けるような、誰にも縛られない「本来の自分」?
今回紹介するのは、ドイツの10分短編アニメーション『Rising Hope』。
制作はドイツ・ベルリンのアニメーションスタジオ「Talking Animals」、監督はMilen Vitanov(ミレン・ヴィタノフ)。
Film University Babelsbergの支援を受けて制作され、複数の国際アニメ映画祭でも賞を受賞している。
登場するのは人間ではなく、“馬”。
けれどその姿は、まるで現代人の生き様を映し出す鏡のようだった。
勝つことで得られる自由。
誰かの期待に応えることで手にする称賛。
だけど、それは本当に自分の望んだ場所だったのか?
レースに勝ち続け、すべてを手に入れたはずの一頭の競走馬が、すべてを失ってから見つけた「ほんとうの希望」とは――。
焦げ団子今回は海外の短編アニメ『Rising Hope』を語っていくぞ!
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『Rising Hope』あらすじ|最速の競走馬が草原にたどり着くまでの物語
ある日、一頭の競走馬がトラックに乗せられレース会場に向かっていた。
その馬は、トラックの車内でにふと見たモニターの中の草原に心を奪われる。
「いつか、あの草原を走りたい」──そう願うように。
馬主に引き出され、いつも通りレースに出場。
でも、今回は違った。彼の目には、ゴールの先にあの草原が見えた。
その幻想に導かれるように全力で駆け抜け、奇跡の優勝。
以来、彼は勝ち続け、馬主には金が舞い込む。
だが時が経つにつれ、馬主は傲慢になり、馬は疲弊していく。
ついには体調を崩し、病院に連れていかれるも──「治療法はない」と見捨てられ、その場に置き去りにされてしまう。
彷徨う馬がたどり着いたのは、街の片隅のバー。
そこにいたのは、1匹のバイク乗りの犬。不思議と話が通じたふたりは、静かに友情を育む。
犬はバイクに乗り、隣に座るよう馬を促す。
走行中、犬はわざとハンドルから手を離し、思わず馬はハンドルを握る。
最初はおっかなびっくりだったが、馬は次第に風を思い出し、走る感覚を取り戻していく。
そんなとき──遠くに草原の絵が描かれたトラックを見つけた馬は、バイクを降りて走り出す。
夜が明け、太陽が昇り、それでも馬は走り続ける。
もう誰のためでもない。ただ、自分自身のために。
そしてついに辿り着いた、本物の草原。
誰に使われるでもなく、ただ風と光の中で走るその姿こそ、彼の“Rising Hope”だった。
『Rising Hope』感想と考察|現代社会を映す“走らされる馬”の姿に共感
「勝てば自由になれる」と信じて、走らされて、勝って、いつの間にか「勝つこと」自体が目的にすり替わってる。
そういう馬の姿が、そのまんま現代人に見えた。
進学校に入って、いい大学に受かって、大企業に就職して、昇進して……
その先に“幸せ”があるって思わされてるけど、実際はレーンの上を走ってるだけだったりする。
気づいたときには壊れてる。



もう走れないってなったら、「もう用済みです」って捨てられる。この馬みたいに。
競走馬って、現実でも同じだ。走れなくなったら引退、繁殖に回されるか、行き場がなければ殺処分。
年齢や体調なんて関係ない。金にならなくなった時点で“不要”とされる。
本作の馬も、レースで使われて、勝たされて、調子を崩したらあっさり見捨てられる。
誰かの期待や金儲けのために走ってきたツケは、最後、自分ひとりで受けることになる。
その描き方が、妙にリアルだった。
そして安易に犬と一緒に生きていく落ちにしないのがいいと思った。
草原を求めて走る馬を、あの犬は追いかけない。
誰かに一緒に走ってもらうことじゃなくて、自分の足で、自分の行きたい場所に向かう。
ちゃんと距離をとって、でもちゃんと見守ってる感じ。
その優しさが、押しつけがましくなくて好きだった。
『Rising Hope』まとめ|“本当の自由”は誰のために走るかで決まる
自由に憧れて、勝ち続けて、壊れて、最後にほんとうの草原にたどり着く。
こういう話、正直めずらしくない。
でもこの作品がちゃんとしてたのは、途中で感傷に逃げなかったこと。
個人的には、犬とぬくぬく暮らすエンドにせず、あくまで「ひとりで走っていく」ラストに着地したのは好感だった。
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