みなさんは、『バンビ』というディズニー映画をご存知だろうか。
生まれたばかりの子鹿が主人公で自然豊かな森の中で成長物語だ。
焦げ団子は幼い頃、鹿という生き物が大好きで、バンビの絵本を何度も何度も繰り返し読んでいた。
柔らかい目。細い脚。森の中で生きる小さな命。
子供心に「かわいい」の全部が詰まってると思ってた。
でも、この歳になって改めて映画『バンビ』を観直したところ、「これ、ただの可愛い動物アニメじゃねぇぞ……」って戦慄した。
母親との別れ、森の火災、友情、恋、試練、そして人間という見えない巨大な暴力
バンビって、可愛い顔して「人生全部詰めこみました」みたいな映画だったんだな……。
今回は、そんな可愛さの皮をかぶったトラウマ育成映画『バンビ』を、団子的ツッコミ込みで振り返っていきたい。
今回紹介するお話が載ってるブルーレイはこちら
🦌 ディズニー映画『バンビ』ざっくりあらすじ(ネタバレ全開)

森の王と呼ばれる雄鹿“森の王子”の子として生まれたバンビ。
生まれたての彼は、何もかもが初めてで、すぐに転ぶ。
でも周囲は「王子様!王子様!」と持ち上げムード。
スカンクのフラワーやウサギのとんすけと出会い、ちょっとずつ森の生活に慣れていく。
草原を走り、雨に打たれ、雷にビビり……世界を「遊び」として楽しんでいた。
——だが、冬が来る。
雪が降り積もる寒さの中、母と2人で餌を探す日々。
そしてついに、あの悲劇が起きる。
草原で食事中、突如響く銃声。
母の「走って、バンビ!」の叫び声。
夢中で走るバンビ。帰っても母はいない。
森の王(=父)が現れ、静かに告げる。
母さんは……もう帰ってこない
焦げ団子むごい…
このシーンで、何人の幼児がトラウマ抱えたか不明。
——それでも季節は巡る。春になり、バンビは成長。
思春期がきて、なぜか全員恋に落ちる謎のイベント発生。
仲間が次々と春の魔法にかかり、バンビも雌鹿ファリーンと恋に落ちる。
でもそこに現れるのが、火災とハンターと死の連続コンボ。
恋人が狙われ、父と森を守る中で火事が広がり、森がまるごと燃えるというもはやラスボス戦みたいな展開に。
奇跡的に生き延びたバンビは、最終的に父と同じく森の王として、
新たな命の誕生(自分の子ども)を見守る存在になる。



バンビ、めちゃくちゃ人生走ってない!?!?
ディズニー映画『バンビ』|考察&感想


1時間で“人生”を見せられる映画
バンビを観てると、「あれ?これって人生……?」ってなる。
最初は赤ちゃんとして生まれて、みんなに可愛がられて、お母さんが優しくて、全部が新鮮で。
でも、ある日突然“自立”が来る。
恋をして、仲間と距離ができて、いつのまにか次の命を見守る側になってる。
いや、詰め込みすぎだろ……?
1時間ちょっとで「生まれて次の世代を見守る立場になるまで」の感情全部体験させてくるの、ほんとディズニーにしては情緒エグすぎる。
森の中で「突然の別れ」。それが“バンビ”
バンビの見どころの中でも、やっぱり外せないのが──お母さんが撃たれるシーン。
子どもの頃に見た人なら、ほぼ全員の心にトラウマとして残ってるはず。
雪の森の静けさ、逃げる足音、銃声。そして、呼んでも返事がない母。
撃たれる瞬間を“描かない”ことでより恐怖を残す演出、マジでズルい。
ここで一気に、「バンビ=動物の可愛い成長物語」から「自然の中の生死と孤独を描く作品」へとスイッチが入る。
母の死は唐突で、説明もなくて、バンビ自身が何が起こったのか理解しきれてない感じもリアル。
あの演出、完全に森の視点なんだよな。人間は一切映らず、音だけがする。



動物たちから見た「人間=見えない恐怖」っていう存在の描き方が上手すぎる。
思春期になった瞬間くっつくな
急に春になって、「みんな恋してて最高〜!!」みたいな空気になるけど、いやいやいやいや!人間界そんなスムーズじゃないからな!?!?
実際は悶々としたり、目合わせられなかったり、そもそも興味すら持たれなかったり、うまく行かないことの方が大半だったりする。
でも、バンビとファリーン、くっつくの早すぎて逆にファンタジーだったわ。
いや絵が綺麗すぎるって!?
1942年の作品なんだよねこれ。
…いやほんと??って何回も思った。
動物たちの毛並み、目の潤み、仕草の可愛さ、今でも通用するどころか余裕で劇場リバイバルしてほしいレベル。
動きがなめらかすぎて、現代のアニメより生きてる感ある。



これが手書きだと????
人間が姿を見せないのが逆に怖い
バンビの世界、人間が出てこないんだよね。
でも気配はする。銃声はする。火事は起きる。
まるで「見えない神」みたいに、人間の影だけが襲ってくる。
これ、逆に「動物視点のリアル」なんだと思った。



人間は顔が見えない、理由も言わない。でも命を奪う。怖すぎる。
父ちゃん何歳なんだよ問題
登場シーンからしてめちゃくちゃ神々しく、セリフも少ないし、何かあると突然現れてめちゃくちゃ威厳かましてくる。
で、作中サラッと「あの方は他の鹿の何倍も長く生きてるの」とか言われてるんだが――
いや、ちょっと待て。それ、鹿界の妖精か仙人じゃん。
普通の鹿は10~15年くらいの寿命って言われてるのに、「何倍も生きてる」ってことは軽く30~50歳コース?
しかも姿がめちゃくちゃ若いまんま。
一方でバンビの母ちゃん、完全に若ママ感あるよな。
気立てよくて優しくて、まだ全然ピチピチしてる(←言い方)。
もし父ちゃんが本当に寿命何倍も生きてる仙人鹿だとしたら、このカップル、年齢差けっこうえぐいぞ。
森の一夫多妻制長老方式の可能性すらある。
てか、鹿って一夫一妻制なの?
はい、ここで冷静な生物学情報タイム。
実際の鹿(たとえばアメリカのホワイトテイルジカ)は――一夫多妻制です。
オスは繁殖期に複数のメスを相手にし、メスは基本的にシングルマザーとして子育て。
つまり、「バンビの父は子育て一切ノータッチでどこかを徘徊している」のがむしろリアル。
でもこの映画だと、要所要所で父ちゃんが現れて、
- 母の死後、バンビを連れてく
- 火事から逃げる時も付き添ってる
- 最終的には跡を継ぐ者として認めてる
……っていう、完全に父性の象徴ポジションとして描かれてる。
バンビの森、もう存在しないんじゃないか説
バンビを観てると、森がやたらと深くて、暗くて、どこまでも続いてる。
風の音、木々の揺れ、霧、光――全部がリアルすぎる。
でも今の感覚で考えると、「こんな森、もうどこにもねえんじゃないか……?」ってなる。
昔の森って、レジャーでも観光地でもなくて、もっと生々しくて、“命の重さ”が詰まった場所だった。
人の手が入ってない、動物たちがガチで暮らしてる森。
それが画面の中にはちゃんと描かれてる。
というかあれ、1940年代のディズニーアニメーターたちが、リアルの森に行ってスケッチしまくって描いた背景なんだよ。
つまり、本当に存在してた森があの世界のベース。
だからこそ、あの森が揺れ動く命そのものに見えるし、バンビたちが生きる場所としてちゃんと機能してる。
現代のアニメにある綺麗な背景じゃない。



もう存在しないかもしれない自然の記録映像みたいなもの。
制作背景:戦争の時代に、森の中の“静けさ”を描いたバンビ


『バンビ』がアメリカで公開されたのは1942年。そう、ど真ん中で第二次世界大戦やってた時期。
そんな時代に「鹿が生まれて成長して、恋して森を継ぐ」という、静かでスローな作品を本気で作り上げたディズニー、なかなかぶっ飛んでる。
しかもこれ、ディズニーが1937年から作り始めてた長期プロジェクトだったんだけど、やればやるほどリアルさにハマって、制作が全然終わらなくなっていった。
リアルを描くために、アニメーターは森へ行った
「動物をリアルに動かしたい」ってことで、アニメーターたちは本当に森に行って鹿の動きや筋肉の動きをスケッチしてたらしい。
背景担当にはティルス・ウォンっていう中国系アーティストが抜擢されて、あの幻想的な森のぼんやりした雰囲気を描き出したのも彼の功績。
ガチで「鹿の目線から見た森」を描こうとしてたから、背景がくっきりしすぎないように、あえてぼやかしてるんだってさ。
制作費200万ドル。戦争で市場も縮小。もう地獄。
こだわりすぎた結果、制作費は当時のアニメとしてはとんでもない200万ドル超え。
でもって戦争が始まってたから、ヨーロッパでは公開できないし、物資も制限されるし、スタッフは徴兵されるし、もう「これ完成すんのか…?」って空気だったらしい。
ディズニー社内でも、「さすがにバンビは一回白紙に戻そうか?」みたいな空気があったとか。
初公開時の反応は意外と冷めてた
満を持して公開されたバンビだけど、当時の評論家の一部からは「リアルすぎて夢がない」とか「メッセージが重い」とか、冷静すぎる反応が返ってきた。
特に、「狩猟反対のメッセージが強すぎる」とか、「母親がいなくなるシーンがトラウマすぎる」とか、ディズニーらしさが足りないって言われたりもしてた。
なんだろう、「ディズニーがやるには重すぎる」って感じだったのかも。
でも観客は、ちゃんと見てた
批評家は戸惑ったけど、観客はしっかり反応してた。
再上映されるたびに観客は増えていって、アカデミー賞にも3部門ノミネートされてる。
音楽・効果音・森の情景──子どもだけじゃなく、大人にもじんわり刺さる内容だったってことだよな。
今では「ディズニー5大クラシック」の一つに数えられてるし、自然描写の美しさはアニメ史の中でもトップクラスって評価もある。



ディズニー、やっぱ化け物だな……。
団子的まとめ|『バンビ』は、自然と命の静かな神話だった
バンビって、最初は「子鹿が森ではしゃいでる可愛いアニメ」くらいの印象だった。
でも改めて観てみると、そこに描かれてるのは――まさに人生そのもの。
生まれて、愛されて、世界を知って、やがて大切な存在を失って、自分の足で立ち上がる。
恋をして、また命をつなぐ立場になる。
ほんの1時間ちょっとのアニメに、赤ちゃんから親になるまでの人の一生が全部詰まってる。
これはただの動物アニメじゃない。
「生きるとはどういうことか」を、静かに、でも力強く見せつけてくる映画だった。



言葉にしすぎないからこそ、心に残る。
ディズニー、あの時代にここまで描いたの、本気で凄いわ。
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