みなさん、「ロストメディア」という言葉をご存知だろうか。
ざっくり言うと、所在や存在が確認できなかったり、公開されていないまま行方不明になった“メディア”の総称だ。
出たはずなのにもう見つからない映画、放送されたと言われるCM、番組の特定回、消えた音源。
テクノロジーがどれだけ発展しても、なぜか出てこないものは出てこない。
そしてロストメディアの面白さ(怖さ)は、ここにある。
「存在したかもしれない」という噂だけが一人歩きして、断片的な証言やスクショの記憶だけが残り、肝心の本体は永遠に見つからない。まるで現代の怪談だ。
ところが世の中には、この“出てこないこと”を逆手に取って、わざと未来にイタズラを仕掛けようとする人物がいる。
未来の考古学者を困らせるために、全力で意味不明な遺物を残そうとするタイプだ。
焦げ団子たとえば――「1万年後にチートスを発掘させる」というイカれた発想を、本気で実行したやつとか。
今回はそんな、夢とロマン(と悪意)が詰まった未来に向けた意図的ロストメディア製造の話をしていこうと思う。
1万年後の人類を困らせる「チートス棺」|ロストメディアの逆張りタイムカプセル
このイカれた企画を本気でやったのが、海外のアーティスト(というかミーム職人)Sunday Nobodyだ。
彼は「未来の考古学者を困らせる」という一点に情熱を燃やしているタイプで、真面目な顔でどうでもいい遺物を“それっぽく”残すことに全力を注いでいる。
で、その代表作が「チートス棺」だ。
やっていることはシンプルで狂っている。
フレーミングホット・チートスを樹脂で固め、コンクリート製の巨大な棺(サルコファガス)に封印して埋めた。
しかも、ただ放り込んだだけじゃない。中身が揺れないように固定し、外側には成分表っぽい情報まで刻むなど、無駄に手が込んでいる。
ここが面白いポイントで、これって普通のタイムカプセルじゃない。
未来に「当時の文化を伝えたい」でもなく、「大事なものを残したい」でもない。
狙っているのはもっと性格が悪いところ――“未来人が本気で解釈してしまう状況”を作ることだ。



最高だなおい。
立派すぎる棺に、くだらなすぎる中身。
このギャップが、1万年後に「これは何の儀式なのか?」という地獄の考察を生む。
つまりチートス棺は、保存じゃなく誤読を目的にした、未来向けの悪ふざけなのである。



そしてこのSunday Nobodyさん最近また何かしでかしたらしいぞ!
海に沈めたハンサム・スクイッドワード像とは?チートス棺と“未来の誤読”考察
チートス棺の時点で十分おかしいのに、Sunday Nobodyはそこで止まらない。
「未来の考古学者を困らせる」シリーズは、陸だけじゃなく海にも進出する。
彼が次にやったのは、古代ギリシャ彫刻(円盤投げみたいな“それっぽい”ポーズ)の肉体に、ネットミームとして有名なHandsome Squidward(イケメン化したイカルド)の顔を載せた像を作ることだ。



なんか顔デカくね?
古典様式 × インターネットの悪ふざけ。組み合わせの時点で、現代人にも既に意味不明なのに、未来人にとってはなおさらだ。
しかもこの像、作って終わりではない。
本人いわく、ギリシャまで持っていって海に沈めた。つまり「いつか発掘されること」まで含めて作品になっている。
- イカルドは
スポンジボブに出てくるイカルド・テンタクルズというキャラ👉 -
https://twitter.com/_redfeels/status/2003148658720821329?s=20 
焦げ団子

なんでわざわざこいつを…??
地中に埋めるのがチートス棺なら、こっちは海中に仕込む版だ。
ここでポイントなのは、わざと解釈の地雷を踏ませに行ってること。
古代ギリシャっぽいフォーマットをまとっている時点で、未来の研究者は「古代の何か」として扱いたくなる。
でも顔が明らかにおかしい。様式が合っていない。意味が復元できない。
この「本物っぽいのに本物じゃない」「古そうなのに古くない」というズレが、未来の誤読を爆発させる。
Sunday Nobodyのやっていることは結局ひとつで、文脈が失われた未来に、わざと誤読のタネを埋めるという悪趣味な遊びなのだ。
海に沈めたハンサム・スクイッドワード像とは?チートス棺と“未来の誤読”考察
チートス棺やミーム彫刻が成立してしまう理由は、シンプルにひとつ。
文脈が死ぬからだ。
今の感覚だと、情報って「ずっと残る」気がしてしまう。
YouTubeもWikipediaも、検索すれば何でも出てくる。
昔のCMだって切り抜きが上がってるし、SNSの投稿もスクショで永遠に残り続けるように見える。
でもデジタルって、実はめちゃくちゃ脆い。
たとえば火事や災害。
サーバー設備が焼けたり、データセンターが被災したり、保管していたHDDが水没したりするだけで、物理的に終わる。
個人レベルでも、スマホが壊れてバックアップがなければ写真が一瞬で消える。
企業でも「移行ミス」「運用停止」「サービス終了」で、普通にアーカイブが死ぬ。
もっと身近な例で言うと、「リンク切れ」だ。
昔読んだ記事、見返そうとして開いたら404。動画も「この動画は削除されました」。SNSもアカウント凍結や非公開で消える。



好きだったあのサイトたち、この10年以内にいくつ消えたことか。
別に世界が滅んだわけでもないのに、情報は日常的に消えていく。
紙なら黄ばんでも読めるし、石なら欠けても形は残る。
でもデジタルは、読み出すための環境が失われた瞬間に“ゼロ”になりがちだ。ファイル形式が古い、再生ソフトがない、規格が死んだ、パスワードが分からない。
こうなると、そこに情報が入っているはずでも、実質ロストメディアになる。
つまり、1万年後を想像したとき、残っている可能性が高いのは「説明」じゃない。
物体の方だ。
ロストメディアを未来で作る男|チートス棺とミーム像が残す誤読の余白


人類は昔から、よく分からないものを見ると、とりあえず“意味”を付けてきた。
しかも後から「いやそれガセだったわ」が普通に起きる。
有名どころだと、水晶のドクロ。
かつては「アステカ/マヤの遺物」みたいに扱われ、見た目のインパクトも手伝ってそれっぽいストーリーがどんどん補強されていった。
ところが調査が進むにつれて、加工痕が近代的だったり、そもそも出どころが怪しかったりで、「これ古代の遺物としては無理があるのでは?」となり、結局近代の偽物説が濃厚になっていく。



要するに、強い見た目とドラマが揃うと、人は簡単に信じる。
もうひとつ例を出すなら、ピルトダウン人。
20世紀初頭に「人類のミッシングリンク発見!」と大騒ぎされた化石が、何十年も経ってから捏造と判明した事件だ。
専門家も含めて長期間騙されてたのがポイントで、つまり「それっぽさ」は時代の空気や期待と結びつくと、平気で“真実っぽく”定着する。
これを踏まえると、チートス棺と海のミーム像が1万年後に発掘されたとき、未来の人類がどうなるかはだいたい想像がつく。
まずチートス棺。
立派な棺に、樹脂で封印された赤い塊。これだけで「儀式」「供物」「禁忌」「副葬品」あたりの単語が勝手に生えてくる。
「重要なものだから封印したんだろう」「開けるな的な伝承があったのでは」みたいな話が、めちゃくちゃ真面目に組み立てられる。
次に海の像。
古代ギリシャ彫刻っぽい肉体で海底から出てくる時点で、未来人の脳内では古代の奉納像に分類される。
ところが顔が明らかにおかしい。そこで最強の便利ワードが出る。
「異文化の影響」。これで全部それっぽく説明できてしまう。
結局、何が言いたいかというと――このシリーズの狙いは「未来に残す」じゃなく、未来に誤読させる余白を残すことだ。
文脈が消えた世界では、悪ふざけが真実になる。ロストメディアの逆張り版である。
チートスを棺に封印する理由|1万年後に“真実”になる悪ふざけ
チートス棺も、海に沈めたハンサム・スクイッドワード像も、やってること自体はただの悪ふざけだ。
でも、こういうのって妙にロマンがある。
結局、歴史って「事実そのもの」よりも、「残ったもの」から作られる。
文脈が消えた未来では、くだらない物ほど“それっぽさ”を演出されてしまう。
考えてみてほしい。
今の時点では、あの像はどう見てもまぬけだ。ミームの顔面を貼っただけで、古代ギリシャでもなんでもない。
ところがそれが、1万年海に沈んで、藻が絡まり、貝がつき、欠けて、発掘される頃には――
たぶん未来人は真顔で「祭祀」「奉納」「異文化の影響」とか言い出す。
そして、勝手に意味が生まれる。



……まあ、ここまで言っておいて何だが。
1万年後の人類に残したいものがチートスでいいのかは、さすがに議論の余地がある。
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