クリスマスソングは、幸せな人のための音楽じゃない。祝祭からこぼれ落ちた「孤独」が歌になる理由。

クリスマスソングはなぜ失恋の曲が多いのか?冬ソングに切なさが集まる理由を考察

街に出ると、どこもかしこもクリスマス一色になる。

イルミネーション、恋人たち、楽しそうな音楽。

この季節が来るたびに、昔からひとつ不思議に思っていたことがある。

クリスマスソングといえば、幸せそうな恋人たちを思い浮かべる人が多い。

でも、実際に歌詞をよく見てみるとどうだろう。

失恋。別れ。会えない夜。一人きりの帰り道。

驚くほど多くの曲が、「寂しさ」や「孤独」を歌っている。

これは気のせいじゃない。

なぜ、こんなにも「寂しい歌」がクリスマスに集まってしまったのか?

焦げ団子

今回は、クリスマスソングが幸せ一色にならなかった理由を、文化と構造の視点から掘っていくぞ!

目次

そもそもクリスマスは「幸せが規定された日」だった|日本のクリスマス文化と孤独

そもそも、クリスマスは「幸せの形があらかじめ決められている日」だ。

日本におけるクリスマスは、キリスト教の宗教行事というより、ほぼ完全にイベント化している。

恋人と過ごす日・家族で団らんする日・一人でいるのはちょっと寂しい日。

こうした「正解の過ごし方」が、テレビ、CM、街の装飾、音楽を通じて大量に刷り込まれる。

つまり、クリスマスは何をすれば幸せかが、強制的に提示される日だ。

そして、そのテンプレから外れた瞬間、人は自分が「持っていないもの」を否応なく意識させられる。

恋人がいない。会いたい人がいない。帰る場所がない。

普段なら気にしなくて済む欠落が、この日だけは異様にはっきり見えてしまう。

だからこそ、クリスマスソングには、失恋や孤独が集まりやすい。

焦げ団子

幸せのテンプレが強い日ほど、失われたものは、よりドラマチックに浮かび上がるものなんだ。

クリスマスソングはなぜ失恋の曲が多いのか?“余った感情”が歌になる理由

クリスマスソングはなぜ失恋の曲が多いのか?冬ソングに切なさが集まる理由を考察

音楽は、祝祭そのものをそのまま讃えるよりも、祝祭からこぼれ落ちた感情をすくい上げるのが得意だ。

街はイルミネーションで埋まり、カップルや家族のイメージが溢れる。

でも、その光の外側には必ず、別の感情が残る。

別れた直後の気まずさ・うまくいかなかった恋の後悔・誰とも会わずに迎える夜の静けさ。

そういう行き場のない感情は、実は「幸せそのもの」よりも歌にしやすい。

幸せは完成形だから説明がいらない。

でも、未完成な感情は言葉を必要とする。だから、クリスマスソングは自然と切なくなる。

たとえば、明るいメロディで流れてくる定番曲の多くも、よく聞くと「失った恋」や「戻らない時間」を歌っている。


たとえば、失恋のクリスマスソングにはこんなものがある。

  • Wham!「Last Christmas」去年のクリスマスに始まった恋が、もう終わっている話。祝祭ではなく、祝祭に裏切られた記憶が主役。
  • 山下達郎「クリスマス・イブ」会えるはずだった恋人は来ない。イルミネーションだけが綺麗で、本人は孤独。
  • マライア・キャリー「All I Want for Christmas Is You」明るい曲調なのに、「あなたがいないと意味がない」という欠落が前提。

海外でも日本でも、事情はほぼ同じだ。

日本のクリスマスソング文化がやたら失恋寄りに育ったのも、偶然じゃない。

クリスマスという祝祭は、幸せな人を祝うためにあるようでいて、実は幸せになれなかった側の感情を、最も強く浮かび上がらせる日でもある。

だから音楽は、その「余り」を拾う。

焦げ団子

クリスマスソングは、幸せな人を祝うための音楽じゃない。

幸せになれなかった人が、それでもこの季節をやり過ごすための音楽だ。

クリスマス=時間が止まる装置?冬ソングが過去の恋を呼び起こす理由

クリスマスソングはなぜ失恋の曲が多いのか?冬ソングに切なさが集まる理由を考察

クリスマスは、ただのイベントじゃない。時間を一瞬止める装置みたいな日だ。

年末が近づくと、人はどうしても振り返りモードに入る。

今年はどうだったか、何がうまくいって、何がダメだったか。

普段なら流してしまう記憶まで、イルミネーションと一緒に引っ張り出される。

そしてこのタイミングで、決まって出てくるのがこれだ。

「もし、あの時こうしていたら」

クリスマスは未来を考える日というより、過去が勝手に再生される日に近い。

だから、失恋と相性がいい。失恋って、基本的に前を向く感情じゃない。

「これから」よりも、「もう戻らない時間」を何度もなぞる感情だ。

年末という節目、街中の「幸せそうな現在進行形」、そして一人で迎える夜。

この条件がそろうと時間は前に進まなくなる。止まった時間の中で、人は過去を見て音楽はその過去を言葉にする。

だからクリスマスソングは、自然と「振り返りの歌」になる。

焦げ団子

楽しいはずの日に、なぜか切ない曲が似合ってしまうのはクリスマスが時間を止めてしまう日だからなんだ。

まとめ|切なさがあるから、クリスマスソングは毎年流れ続ける

もしクリスマスソングがただ幸せなだけの歌ばかりだったら、たぶんここまで長く聴き継がれてはいない。

毎年同じ時期に流れて、毎年少しずつ違う気持ちで聴いてしまうのは、そこに切なさが混ざっているからだ。

恋人がいる年も、いない年も、うまくいった年も、失った年も同じ曲が、違う顔で刺さってくる。

クリスマスは祝う日であると同時に、過去を思い出してしまう日でもある。

だから、失恋の歌が残り孤独の歌が定番になり、それが「クリスマスの風物詩」になった。

幸せだけじゃないから、毎年また聴いてしまう。

クリスマスソングが切ないのは、この季節そのものが少し切ないからだ。

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