今回は、雨穴さんの最新作『変な地図』をご紹介!
焦げ団子『変な家』『変な絵』に続く、“変なシリーズ”の第4弾!
今回はホラーにミステリー、サスペンスに妖怪まで全部盛り。
しかも、シリーズの集大成とまで言われている作品となっている。
そして──シリーズファンにとっては、ここが一番の衝撃。
あの栗原さんが、ついに主人公になりました。
これまで図面やイラストの謎を冷静に読み解き、ぽやぽやしている雨穴さんに容赦なくツッコんでいた栗原さん。
そんな彼が、今回はガチで物語の中心に立つ側に回る。
舞台は、彼がまだ22歳の大学生だった頃。
祖母の死、謎の古地図、そしてそこに描かれた7体の妖怪。
栗原さんは、この不可解な謎を追って、自ら旅に出ることになる。
シリーズ未読でも大丈夫。
今作は完全に独立したストーリーで、これが初めての雨穴作品でもすんなり入ることができる。
むしろテンポが抜群なので、雨穴さんシリーズ「最初の1冊」にもぴったりな構成になっている。
この記事では、『変な地図』の魅力をネタバレなしで紹介していこうと思う。
序盤から漂う不穏な空気、栗原さんの人間味、そして地図の謎が誘うワクワク感。
気になっている人は、ぜひこの不思議な物語の入り口を覗いてみてほしい。


今回ご紹介する作品はこちら!
雨穴さん『変な地図』のあらすじ・設定紹介(ネタバレなし)
主人公は、建築を学ぶ大学生・栗原文宜。
頭が良くてまじめだけど不器用で、就職活動もうまくいかない。
面接で「建築に熱意はありますか?」と聞かれて「ありません」と答えてしまう、ちょっと正直すぎる性格だ。
ある日、父から「祖母の家を手放そうと思う」と相談され、栗原はその家を見に行くことにする。
会ったこともない祖母。何の思い入れもなかったはずなのに、なぜかその家には引っかかる違和感が残されていた。
そして栗原は、一枚の不思議な地図を見つける。
海沿いに並ぶ民家、真ん中には湖と三日月のマーク。
湖の向こうには三角屋根の家、背を向けた女性、そしてその先に描かれた――7体の“妖怪”。
なぜ祖母は、この地図を手にしていたのか?
そして、この地図に描かれた場所はどこなのか?
栗原はその謎を追い、地図に導かれるようにしてある集落へと向かう。
『変な地図』の感想|栗原ファン歓喜!人間味あふれる主人公が魅力
ここでは『変な地図』の魅力をネタバレなしでご紹介していくぞ!
読みどころ①:ついに語られる、栗原さんの“中の人”
『変な家』『変な絵』で登場してきた栗原さんは、図面やイラストの違和感を冷静に読み解く、理知的でちょっと毒舌なキャラだった。
雨穴さんの少し天然な発言にツッコミを入れるポジションとして、読者にとっても頼れる頭脳役として親しまれてきたけれど――
これまで彼自身の過去や感情が描かれることはほとんどなかった。
今作『変な地図』では、そんな栗原さんがまさかの主人公。
舞台は大学生時代、就活に失敗し続け、不器用な性格で社会になじめず、そして母の死を抱えたまま生きてきた、弱さや喪失を背負った一人の青年として登場する。
けれど、“変”に対しては誰よりも敏感で、目の前の違和感から目をそらさない。
嘘がつけず、空気も読めないけれど、「調べよう」と思ったら止まらないタイプの人間。
この真っ直ぐさと理性的な視点の両立こそ、今作の栗原さんの魅力だと思う。
すでに栗原さんのことが好きだった人は、さらに好きになる。
今まであまり意識してなかった人でも、「……こいつ、めっちゃ良い奴じゃん」と静かに刺さるはずだ。



めちゃくちゃ魅力的なのよ栗原さん
読みどころ②:「地図」という仕掛けが最高にワクワクする
地図って、それだけで“物語のはじまり”みたいな気がしないだろうか。
『変な地図』はまさにその感覚に訴えかけてくる。
最初に登場するのは、古びた手描きの地図。
海沿いに並ぶ民家、三日月のような湖、背を向けた女の人、そして7体の妖怪たち。
どこか静かで、不気味で、意味はわからないけど気になって仕方ない。
読者は栗原さんと一緒に、その地図を眺めるだけで、気づけば物語に足を踏み入れている。
何なんだこれは?どこなんだ?
ページをめくるたびに、地図に描かれた風景の意味が段々明らかになっていく。
謎解きのような快感と、少しずつ深くなっていく不穏さ。
ワクワクしながら読み進めていたのに、いつの間にかゾクリとしてる──
その感覚が、たまらなく気持ちいい。
読みどころ③:テンポがめちゃくちゃいい
ホラーやミステリーって、展開が重かったり、描写が長すぎたりで途中で飽きることもある。
でも『変な地図』はその逆。とにかくテンポがいい。
違和感のある家 → 地図の発見 → 母の痕跡 → 地図の場所を突き止める → 現地へ……
ここまでの流れが驚くほどスムーズで、「え、もう半分読んだの!?」と気づく頃には、もう完全に物語の中に引き込まれている。
不気味な描写もあるけど、必要以上に引っぱらない。
情報が提示されれば、それが動機につながり、キャラが動く。
そしてまた新しい出会いと違和感が待っている──という、読者の“知りたい”を先回りして拾い続ける構成のうまさが光っている。
一見地味なシーンにも、ちゃんと意味がある。
「これ、あとで絶対に回収されるやつだ」と思わせる仕掛けが散りばめられていて、無駄な場面が一切ない。
読みやすくて軽快。でも情報量はしっかりある。
サクサク進むのに、不穏な空気だけはちゃんと残る。
このスピード感と不気味さの両立、本当にレベルが高い。



400ページ一気読みした。
まとめ|変なシリーズの集大成として栗原さんの物語がここにある
地図の謎、栗原の過去、祖母の死。
そのどれもが派手じゃないのに、静かに不穏で、読んでいるうちに抜け出せなくなる。
しかも文章は読みやすく、テンポも良く、推理の余地はたっぷりある。
ホラーやミステリーに苦手意識がある人でも、物語に自然に入っていけると思う。
雨穴作品が初めての人にも、シリーズファンにもおすすめできる一冊。
“地図”というモチーフにピンときたなら、まず間違いなくハマる。
気になっているなら、今読んでおいて損はないのでぜひ読んでみてください!


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